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翻訳家


人類の知識である書物は、日本語で書かれたものだけではありません。近世以前は漢文、また明治維新以降は英語やドイツ語などの書籍を翻訳してその知識を吸収することで、日本の文化は発展をとげてきました。近年はコンピューター翻訳の精度が日進月歩で向上しつつあるとはいえ、2つの文化をつないで的確な訳語で表現する技術は、機械の力だけではけっして代替することができないものです。

翻訳業は、小説やノンフィクションといった書籍を翻訳する出版翻訳、ビジネス文書や説明書を訳す産業・実務翻訳、映画やテレビの字幕を訳す映像翻訳などにわかれます。一般には翻訳家というと出版翻訳のイメージが強いのですが、これは翻訳家全体のなかで1割程度の人数でしかありません。大部分の翻訳家は、ビジネスの現場での実務翻訳を担当しています。

翻訳家になるのに必須の資格はありません。ただし、各言語の資格検定や翻訳技能検定に合格できるくらいの能力の持ち主でなければ、この仕事をこなすのは困難でしょう。また、技術アップの方法としては、翻訳専門学校や通信教育で学ぶほか、翻訳業を募集している職場に派遣社員や契約社員としてくわわり、実務を通じて能力を高めてゆく方法もあります。また出版翻訳の分野であれば、有名な翻訳家のもとに弟子入りして、リーディング(下読み)とよばれるアシスタント作業を続けるのもよい方法です。映像翻訳については、映像制作会社などに就職するとよいでしょう。

翻訳で重要なのは、たんにその言語に精通していることではありません。本当に大事なのは、日本語の豊かな表現力と読解力。いかなる語学の天才でも、かんじんな日本語能力が不十分ではつとまりません。また、ニュアンスをくみとってアドリブで訳すことも必要な出版翻訳や映像翻訳にくらべ、デリケートな契約書などをあつかうことの多い実務翻訳は、なにより正確さが第一。おなじ翻訳とはいえ、求められる方向性がまったく違うので、注意が必要です。

翻訳家の収入は、人によってさまざま。ただ、給与所得が中心の映像翻訳の分野以外は、翻訳エージェントなどに所属していても、基本的には腕一本で勝負するフリーの世界です。印税収入が中心の出版翻訳、一案件ごとに報酬を支払われる実務翻訳という区別はあるものの、最後は自分の技術と実績が仕事量と報酬水準を左右する点に変わりはありません。また、英語の翻訳は需要が頭打ちとなりつつあるこの業界。いっぽうで、グローバルビジネスの発展にともない、中国語や韓国語、はたまたタイ語やインドネシア語などでビジネス文書を読解・作成する機会は増えてきています。これらの言語の実務翻訳家としてある程度の実力を持っているのであれば、仕事がひっきりなしに入る可能性は高くなります。

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